やけに鮮明な夢を見ているような気分だった。
それでいて、この時間を夢にしてたまるかと、強く思っていた。
2023年1月3日。
私は、まだ新しい年を迎えたばかりの浮ついた空気が残る東京にいた。
目的は「JOHNNYS' World Next Stage」
舞台運がとことん悪い自分にとって、初めての舞台だった。
発券されたチケットには1階A列の文字。
予備知識がなさすぎてそれが表す意味には気がつかなかったが、座席表を見た瞬間手が震えた。
なんたるビギナーズラック。
私、元日に引いたおみくじで「慎ましく生きろ」って書かれてたのにいきなりこんな特大の幸せをいただいてしまって大丈夫なんだろうか…と不安になりながら座席についた。
開演までずっと、緊張で胃が痙攣している感覚があった。隣の友人はほんのりバグってた。人見知り陰キャのくせに隣の席の人と喋ったりなんかしちゃったあたり、多分私もバグってた。
だってステージが近すぎる。
大学の授業の時の教授との距離より全然近い。
なんやこれ、なんやこの幸運、私は今日生きて帰られへんのか…
って始まるまでずっと呟いてた。(こわ)
そして、開演。
登場した瞬間、予想の5倍くらい近い距離に困惑した。
そして、みんなの輝きにただただ圧倒された。
自分はとんでもないところに来てしまったのだと思い、この輝きを2時間半直視し続けることが果たして自分にできるのだろうかと若干不安になった。
全ての曲目に触れるのは(己の記憶力の限界と論文レベルの長さになる恐れがあるため)難しいので、ここからは印象的だった場面をピックアップしていこうと思う。
以下、ネタバレと狂ったオタク人格の出現を含む。
まずは殺陣。
最初のゆうぴーが刀を抜くシーン、その真剣な表情に会場全体に緊張の糸が張っているのがわかった。
いきなり1対2の構図から始まった瑞稀くんはキツそうだなと思った。
途中、HiHi5人が斬られて倒れ込むシーンで丁度目の前が作間さんで、頭頂部を見ることができた。
(なんたる経験…髪の毛サラッサラでお肌もめちゃ綺麗…羨ましい…)なんてことを一瞬思ったが、その直後、少し離れたところに落ちた刀を手繰り寄せて立ち上がり、再び立ち向かう一連の流れのリアリティと泥臭さの中の美しさに一気に引き込まれた。
最後にHiHi5人が横並びで斬られるシーンでも目の前が作間さんで。
斬る浮所さんの次に近い位置かつゼロズレで自担が斬られる瞬間を見るという、大変複雑で貴重な経験をさせていただいた。今思い出しても震える。
斬られる瞬間の作間さんの表情が、苦しそうでも無念そうでもどこか覚悟を決めたようでもあり、芝居だとわかっていたけど私も苦しくなった。
今もその瞬間の表情が脳裏に焼き付いている。
あれは確かに、名前もわからない誰かの、最期の瞬間だった。
11人での殺陣は、途中で舞台上に15cmほどの段差が出現したこともあり、一歩間違えば衝突や転倒の危険があったと思う。
しかし、舞台をギリギリまで使って全力で走り回り斬り合う姿を見て、一体どれほど厳しい稽古を重ねてきたのだろうかと思い、泣きそうになった。
暗転して舞台が下がっていく時に、マイクを通さない地声の荒い息づかいが聞こえてきて、殺陣がいかにハードであったか、いかに彼らが全力で取り組んでいるかが感じられて、堪えていた涙が溢れた。
ここから戦争が始まる。
「急げ!若者」は作間さんのソロパートから。
とても透き通っていて、心地よい高さの声。
持って生まれたその才能に、きっとまた努力を重ねたんだね。
もともとの声が素敵だから歌唱力が上がったら敵なしだなぁとは以前から思っていたけれど、どんどんレベルが上がっていっているのがわかった。
どこまでも努力を重ねられるひと。ああ好きだなぁと、思った。
戦争のシーンでは、美しさや迫力に魅入ると同時に、目の前の舞台を通して70年ほど前の現実を見ていたように思う。
すごかったね、かっこよかったね
なんて感想で止めてはいけないのだと、彼らの表情を見ていて感じたから。
当時の暮らしに思いを馳せると、やっぱり泣いてしまうのだ。
二通の手紙。瑞稀くんと皇輝くんの感情がこもった芝居に胸打たれた。
当時、同じような気持ちで、同じような状況で、
「お国のために」と言われながら、
「お国のために」と言いながら、
散って行った若者がきっと数えきれないほどいる。
苦しくて苦しくて仕方なかった。
ライフルのシーンは正直ほぼずっと作間さんを見ていたけど、美しいの一言だった。
ライフルだけを支点にした側転、一瞬何が起きたかわからなくて度肝を抜かれた。
すごすぎるでしょ、作間さん。
途中一度だけライフルを落とした時に、一瞬苛立った顔をしていて、ああ悔しいんだなって思って。
どこまでも高みを、完璧を目指そうとすることができる人が、私はとても好きだったと思い出した。
一幕を通して、私は何度も泣いた。
戦争で散っていった人たちは、丁度今舞台に立つ彼らと同じくらいの年齢で。
時代が違えば、こんな風に舞台の上で輝く彼らを見ることなんて叶わなかったわけで。
そんなことを考えていると、今この瞬間に、舞台の上で輝く彼らを目の前で見ることができるのは、一体どれほど幸運で恵まれたことなんだろうと涙が溢れてきたのだった。
私たちは、もう知っている。
当たり前は簡単に崩れることを
同じ時間を同じ空間で共有できるのはとても恵まれたことだということを
知っているはず、学んでいるはずなのだ。
自分自身が戦争を体験したことはなくとも、ウイルスによって脅かされた生活から。
今もなお、世界の何処かで続く戦争から。
当たり前は簡単に崩れる、なんて当たり前のことを、人はやっぱり忘れてしまう生き物だから。
こうして思い出さなくてはいけない。
自分の中に持っていなくてはいけない。
そのきっかけを、私はこの舞台からもらった。
それが、ここで得た何より大きな価値だったと思う。
第二幕は、ジャニーズのSHOWの世界。
煌びやかで、全力で、美しい世界に魅了された。
剣舞の作間さん、美しさが段違いで。
結構なしなりがあるはずなのに、かなりの速度感で剣を扱っていて、剣先まで神経通ってるの??って問いたくなるくらい身体と一体化していた。
動と静を司りし作間龍斗。
本当に末恐ろしいの一言である。
ところどころ楽しくなりすぎて、後ろの方の迷惑にならない範囲でリズムをとりながら左右にゆらゆら揺れていたら、ゆうぴーとガリさんと瑞稀くんと目があってニヤってされた気がする。(気がする、だけなんだけど、そう思っておいた方が絶対的に幸せなのでそう思うことにする)
新曲もめちゃくちゃかっこよかった。
始まる前の、ゆうぴーが1人1人とハイタッチしていくところで、ハイタッチの音がしっかり聞こえて胸が高鳴った。
作間さんのラップパートが新鮮で、いつもより低い声が出ていてとてもよかった。
かっこいい曲で、でもパフォーマンスをしている5人はニコニコと楽しそうで、ああ今とっても幸せだなぁってしみじみと思った。
新曲リレーが終わって全員が真っ白な衣装で登場して、全員で歌ってくれた。
それが物凄い輝きで、でもどこか儚くて、かと思えばとてつもなく美しくて。
私は真剣に、これは死ぬ前に見る夢なのだと思った。
最後にこんなに美しいものを見させてもらえるなんて、もうなんの後悔もない…と思ってしまう程度には素晴らしかった。
ああすごいなあ、これが、この舞台に立つ人たちにとっての人生なんだ
この人たちの人生の束の間の時間を、私はこの目で見させてもらっているんだ
そんなことを思い、改めて、ありがとうと伝えたくなった。
ここからは書ききれなかった5人についての記憶を少し。
ゆうぴーは、やっぱり輝きがすごい。
あんなにセンターが似合う人っているのね…といつも思うけど、今回もそう思った。
その存在感で、場の空気をつくってしまう人。
あと、最後の全員での歌唱の時かな?みんなフレジュの子たちと肩を組んでいたんだけど。
ゆうぴーは両脇にちっちゃいJr.の子を抱えていて、ニコニコしながら話しかけててとても尊い光景だった…
後輩たちを包み込むような、優しくも力強い先輩を感じました。
瑞稀くんは、穴澤さんの手紙の朗読からの君にこの歌をの歌唱がやっぱり印象的だった。
心の揺れを声の震えで表現しながら読まれた手紙も、心からの願いを託したような歌も、ひとつひとつに心が震えるのを感じた。
瑞稀くんを通して穴澤さんの想いを聴いた。
あまりに辛くて、苦しくて、忘れられなくて。
終演後に穴澤さんについて調べた。
穴澤さんは、出撃前に婚約者である智恵子さんから自身の代わりにとマフラーを贈られ、そのマフラーを巻いて出撃されたそうだ。
まだ23歳。
戦闘機に乗り込む時、その命が終わる時、何を思っておられたのだろう。
想像することもできないほど壮絶で、私には語る言葉がない。
ただ、忘れてはならない、知らなければならない、と思った。
橋本さんは、公園のシーン。
長いシーンの中で、他の人が話している時もひとりずっと芝居を続けているのがよくわかった。
表情とか、呼吸とか、誰かの言葉に対してほんの少し肩を震わせていたりとか。
未来への不安を感じながら、どうにかしなければと踠く若者を見事に演じ切っていた。
橋本さん、以前もっと演技の仕事がしたいって仰ってたけど、私ももっと見たいよ。
舞台で、こんなに繊細にお芝居ができる人なんだなぁと感動しました。
ガリさんは、やっぱり場の空気を操る天才で、なんと言っても自分自身がとにかく楽しんでいるのが伝わってきた。
「いつの時代も…」っていう台詞が、まるで台詞じゃないみたいに感じられたのは、きっとガリさん自身がいつも物事を深く考えて自分の言葉で伝えてくれているから。
言葉もパフォーマンスも、とにかく説得力がある。
「猪狩蒼弥」という人そのものが、説得力の塊で。その上で言葉やパフォーマンスを魅せてくれるもんだから、もう敵わない。
あと、めっっっちゃ横顔が綺麗。
作間さんは、一言で表すなら「美」。
お顔も動きも、本当に美しくて圧倒された。美の暴力。
ゼロズレで見られる瞬間が多くて、じーっと見てしまうのがなんだかもう逆に申し訳ないような気持ちになっていたんだけれども。
下から見上げるなんて経験そうそうできるものでもないので、ごめんなさいと思いながら見つめていました。
どの角度から見ても凛としていて絵画みたいに美しくて、忘れたくないと強く思った。
下から見上げたお顔も、武器を扱う繊細な動きも、透き通った歌声も、指先まで神経が通ったダンスも、ライトが当たらない瞬間にも続けられていたお芝居も。
夢でもなんでもいいから、忘れたくないと。
最初から最後まで、全員が舞台の上を所狭しと駆け回っていた。
きっと物凄くハードな演目続きだと思う。
息づかいが聞こえてくるほど近い席で見ていたのもあり、終始みんなの気迫に圧倒されていた。
私にとって、辛い時にこそエンターテインメントは必要で。きっとそれは、多くの人にとってもそうなんだと思っている。
でも、平和じゃないと届けることも受け取ることも難しい。
自分が今生きていること、
今この時代に彼らに出会えたこと、
同じ時間を同じ場所で共有できること、
彼らが舞台に立ってくれること。
どれも特別で、幸せで、有難いことだ。
有り得ないほど恵まれた席で、私はじっと手を見ていた。
短く揃えられた爪、血の通った手。
今まででいちばん、彼らもちゃんと同じ世界に生きている1人の人間なんだと感じられた。
みんな、頑張っている人の手をしてた。
その手で、きっとこれからもいろんなものを掴み取っていくんだね。
私は、その手に願うものが全て収まることを誰よりも信じて、祈っていたいと思うよ。
お正月から、こんなにもハードな舞台でエンターテインメントを届け続けている彼らはなんてすごいんだろう。
何を考えているんだろう。しっかり休めているだろうか。
自分なんて到底足元にも及ばないけれど、できる限り近づきたいと思った。
何より、彼らが全身全霊をかけて届けてくれたものを、ずっと大切に持っていたいと思った。
この道を選んでくれたこと、こうして舞台に立ってくれていることに、言い尽くせないほどの感謝の気持ちを抱いています。
人生の欠片を見せてくれて、本当にありがとう。
“忘れたくない日”がある人生は、きっと良いものです。
良い人生をくれて、ありがとう。