駆け抜けた瞬間の熱を帯びた風が、ここまで伝わってきたようだった。
伝説の序章を、私は確かにこの目で見たのだ。
深夜バスに揺られること7時間。
2022年3月18日、私は横浜にいた。
Spring Paradise(略してスプパラ)のHiHi Jets公演、『CRUSH THE FRONTLINE』に参戦するためだ。
私にHiHi Jetsを熱心に布教してくれた友人がめでたくライブに初当選し、私をお供に選んでくれたおかげで、初めてHiHi Jetsに会える日がやってきたのだ。
横浜は雨。
ホテルで身なりを整え、会場に向かって歩いていると、何処からか人の流れができていた。
大きめの鞄から覗くうちわの柄。きっと目的地は皆同じ。
いよいよライブに来たのだという実感が湧き、楽しみな気持ちと緊張感が高まった。
まさかの表面が上になって出てきたチケットに爆笑し、恐れていた通り4階席だったことに爆笑しながら、エスカレーターを乗り継ぎ座席へ。(陽気でよろしい)
…思っていたより高い。
吊り照明を見下ろす高さ。高所恐怖症にはなかなか厳しい。
でも、ここにいられるだけで幸せだから。
多くを望む必要も、何かを嘆く必要もなかった。
モニターはほとんど見えなかったが、ステージは全体的に見渡せる席だったので、個人的には良席。
猪狩担がめちゃくちゃ多いブロックで若干肩身が狭い感じはあったものの(笑)、隣の猪狩担のお姉さんも友人の隣の猪狩担のお姉様方もめちゃくちゃ優しくてピースフルワールドだった。
高さに対する恐怖と闘いながら、双眼鏡でセンターステージのバミリを見るなどして開演を待った。
変わるモニター、響く音、高まる興奮。
ど真ん中に現れた5人。
…これが。
これが、HiHi Jetsか。
照明に負けない輝きを放つ5人組が、そこに立っていた。
Jr.をデビュー組のバックダンサーだと思っていた頃の私には想像もできなかった輝きがそこにあって。
「ああ、眩しいな」
これが、HiHi Jetsの第一印象となった。
なんとなく、Jr.のライブって私には敷居が高くて。「何年も応援してます!!!」みたいな人しか行っちゃいけないんじゃないかなって思っていて。
私はまだHiHi Jetsのファン歴約2年で、現場はこれが初めてで、多分自覚していたよりも緊張していたと思う。
だからこそ、登場と同時に涙が出てきた自分に驚いた。
私は、自分で思っていたよりずっと、HiHi Jetsに会いたかったらしい。
次々と変わる楽曲に合わせて、会場の空気も変わった。
会場の空気を変える力が彼らには十分にあるのだとわかった。
これに乗れば楽しい。直感でそう思わせるステージだった。
まるで息をするかのような、自然体のエンターテインメント。
嫉妬すら覚えるほどの才能と、未来永劫敵わないであろう努力の片鱗が、息つく間もなくステージの上を駆けていく。
彼らが起こす熱い風は、4階席にも確かに届いていた。
眩しかった。
その輝きを見つめながら、私は公演中何度も泣いてしまった。
HiHi Jetsの中にある、「アイドルとしての美しさ」のようなものに、心臓がキュッとなった。
デビュー組のライブにはない、言語化するのは難しい独特の刹那的美が、あの時間あの空間にはたくさんあったように思う。
この日、この瞬間は“今”しかないのだと、強く思った。
彼らの才能も努力も、この時代も、正義も悪も何もかも、まるごと包んでしまいたかった。
そう考えるほどに、愛おしい瞬間の連続だった。
ここからほんの少し、曲目に触れさせてほしい。
「Maybe」
作間くんのソロ。
大好きな作間くんの歌とダンスを堪能できて幸せだった。
作間くんのダンスは一挙手一投足に無駄がなくて、その美しさに完全に魅了された。
私は、作間くんのダンスが初めて見た時からとても好きで。
繊細で滑らかで、かと思えば力強さもある。
指先から爪先まで神経が行き渡っているような、あぁ美しいな、と感じる踊り。
きっとこれからも進化していく。なんて楽しみな人なんだろうかと公演中何度も思ったし、しばらく経った今も思っている。
「情熱ジャンボリー」
私が一番聴きたかった曲。
大学1年の夏、希望なんてまるでなかった時に、よくYouTubeでこの曲を聴いてた。
私の中でこの曲はHappinessと同じジャンルに分類されている。明るく楽しいのに聴くと泣けてくる曲。
アイドルが歌うことに意味がある、そんな楽曲。
彼らと同じ空間でこの曲を聴くことができた。
その事実だけで、明日からも生きていけると思った。
この曲、本当に大好きで。
いつかHiHi Jetsが歌ってくれないかなってずっと思ってた。
この曲はタイトルこそDear “WOMAN” だけど、私の中では全ての人への愛のうた。
5人からの愛を受け取って、泣いて。
出来ることなら、歌詞の全てをそのまま5人に届けたかった。
君が君でいることがとても美しい。君こそ、我が誇り。心からそう思う。
だからどうか、忘れないでいてね。
「A・RA・SHI」
涙腺崩壊。
またライブ会場でA・RA・SHIが聴けて、ラップに乗れて、一緒に振りが出来る日がこんなに早く来るなんて思ってなかったから。
もちろん、嵐のものとは全く違う。
でも、嵐の曲をこうして大切に歌い継いでくれる後輩がいること、嵐の曲が目の前で生きていることが、堪らなく幸せだった。
錚々たる先輩方の曲を20曲もパフォーマンスすることは、プレッシャーもあってきっと想像以上に大変だと思う。
でも、それを見事にやってのけた上に、「この歴史に新たに名を刻むのは俺らだ」とでも言うかのような新曲「JET」の初披露。
リスペクトを込めて1つ1つの楽曲と真摯に向き合いながらも、最後に自分たちの曲で宣戦布告をするような感じが、HiHi Jetsらしくてとても好きだった。
HiHi Jetsは本当に「ジャニーズ」というものを愛していて、ジャニーズJr.の権限をフル活用して「ジャニーズのエンターテインメント」を届けてくれているのだと感じた。
ジャニーズとしての誇りと、HiHi Jetsとしての自信が、パフォーマンスに表れていた。
愛おしかった。涙が出るほど。
ゆうぴーは天性のアイドルだと思った。華があって、パフォーマンスしている時にステージが喜んでいるように見えたから。
瑞稀くんは声が綺麗で、思っていたよりずっと力強かった。曲によって印象が変わる、それが一番顕著だったのは個人的には瑞稀くんだった。流石だと思った。
橋本さんは確かにセクシーで、何度か腰を抜かした。でもそれ以上に、客席を見つめる慈愛に満ちた瞳が印象的だった。
ガリさんはとんでもないエンターテイナーだと思った。会場の空気を楽しげに転がす、末恐ろしい19歳。エンターテインメントの神様に愛されていると感じた。
作間くんは美しかった。意識的にも無意識的にも、美しい動きをしているんだと思う。思わず惹かれる魅力があった。
五者五様の色が鮮やかで。
その色を一面に広げたようなライブ会場が、あの空間が、美しくないはずがなかった。
ローラーを履いて、会場内を所狭しと駆け回る。歌う。踊る。
願うものを本気で掴み取りにいく、そんな若い勢いをひしひしと感じた。
気を抜けば、あっという間に置いていかれる。
どこまでもついていきたいと、はっきり思った。
「この人生最高だなって思ってます」
最後の挨拶の、この言葉に救われたのは、多分私だけじゃなかったと思う。
応援が、時に重荷になることもわかっているから。
本当にこれで良いのか、私みたいな能天気なオタクでも、悩むことがあるんだよ。
そんな自分の葛藤を、丸ごと包み込んで肯定してもらえたようで、本当に、本当にうれしかった。
作間くん、ありがとう。
あなたのこの一言で、私は救われました。
楽しかった、幸せだ
そんな言葉を伝えてくれた5人。
どうか、その瞳に映る世界が美しいものでありますように。と、願わずにはいられない。
これからもずっと「最高だ」と思える人生を歩んでもらえるように、応援していたいと思った。
ジャニーズへの愛と尊敬が詰まったライブだった。
そして何より、HiHi Jetsとして生きる覚悟が伝わってきた。
「伝説になりたい。」
これは、決してビッグマウスじゃない。
彼らは本気で伝説になろうとしている。
あの輝きを見てしまったら、もう戻れない。
夢のような時間をありがとう。
最前線をも打ち砕く。その心意気に惚れました。
あなた達が「伝説」となる、その日まで。